部活動問題とやりがい搾取について私感

 やりがい搾取という、本田由紀さんが「軋む社会 教育・仕事・若者の現在」の中で名付けた概念があります。簡単に書くと、企業の経営者等が、従業人にやりがいを意識させ、金銭対価を抑制する構造のことで、ブラック企業で非常によく使われます。事例は非常に多いのですが、有名なものである居酒屋甲子園の例を一つ。
 なお、甲子園と名がついているから、部活動問題と絡めたわけではなく、偶然です(苦笑)。

 スポットライトに照らされて一人の従業員が「夢をあきらめない!」と涙ぐめば、店長が笑顔で「みんなを幸せにしたい!」と叫ぶ。そして最後には従業員一同並んで、「ありがとうございました!」と深々とお辞儀――『クローズアップ現代』(NHK総合/1月14日放送)の「あふれる“ポエム” ?! ~不透明な社会を覆うやさしいコトバ~」で紹介されたイベント「居酒屋甲子園」が議論を呼んでいる。
(中略)
 社会学者である著者の本田氏は同書の中で、「やりがい搾取」の1つに、「サークル性、カルト性」という要素を挙げる。
「仕事の意義についてハイテンションなしばしば疑似宗教的な意義付けがなされ、時には身体的な身振りなどをも取り込みながら、高揚した雰囲気の中で、個々の労働者が仕事にのめりこんでいく」「これがしばしば見聞されるのは、飲食店などの接客アルバイト労働においてである」という。
 そして、ある居酒屋チェーンの模様を紹介する。
「代表取締役を『師範』、店舗を『道場』、教育・研修を『修行』、採用を『入門』と呼んでいる。各店舗には『師範』が書いた相田みつを風の色紙が飾られており、そこには『夢は必ず叶う』『最高の出会いに心から感謝』『おとうさんおかあさん産んでくれてありがとう』『共に学び共に成長し共に勝つ』などと書かれている」

「同店のスタッフの離職率はたいへん低い。『うちはお金を稼ぐことができないバイトです。でも、夢を持つことの重要性を感じ、自分自身が成長したことを感じることができます』と副社長」
「サークル的、カルト的な『ノリ』のなかで自分の『夢』や『成長』を目指して結局は『働きすぎ』に巻き込まれている若者たちが存在するのである」
宗教的「やりがい搾取」の罠~気持ち悪い、洗脳…居酒屋甲子園騒動から考察

 そして、昨今話題になりつつある、「部活動がほぼ無償の長時間労働によって成り立っている」問題に、非常にこれに似たものを感じています。
 部活動によって、どのように、そしてどれくらい教育への効果があるのかという定量的、実証的な調査すら十分に行われているとは言い難いのが現状です。しかし、特に体育会系の部活において、単純に「成長」「やりがい」の為に必要であるという人は少なくありません。これらはあくまで思い込みでしかないのですが、その為に生徒側は時間や尊厳(先輩からの理不尽ないじめは少なくない)を奪われ、教員側も時間や金銭を奪われているのが、今の日本の部活動の現状と断言しても良いでしょう。
 それでも、双方自由意思によって参加するのであれば、第三者が止める権利はないでしょう。問題は、教員側も生徒側も、環境次第では拒否権がなく(事実、筆者も中学時代は体育会系部活と極めて体育会的な吹奏楽部以外の選択肢がなかった)、結果として貴重な時間を無意味に奪われ、顧問は対価としての金銭を、入りたくもない部活で活躍できなかった生徒は尊厳すら失ってしまう事になり得ることです。
 昨今になり、部活動問題が署名になるくらいに(署名サイト:「部活がブラックすぎて倒れそう… 教師に部活の顧問をする・しないの選択権を下さい!」)浸透してきたのは歓迎したいところですが、待遇だけの問題として扱わず、そもそもの部活動の存在意義について、改めて世間が考えてくれることを願って止みません。

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