電通の過労死事件の刑事事件としての公判雑感

 電通の過労死事件における、刑事事件としての初公判が始まりましたが…。

 違法残業があったのに必要な防止措置を取らなかったとして、労働基準法違反の罪に問われた広告大手・電通(東京)に対する初公判が22日、東京簡裁(菊地努裁判官)で開かれた。大企業が長時間残業について刑事責任を追及され、トップが法廷に立つのは異例。

 法人を代表して山本敏博社長(59)が出廷し、起訴内容についての認否を問われ、「間違いありません」と罪を認めた。検察側は「自社の利益を優先させ、違法な残業が常態化していた」と指摘し、罰金50万円を求刑。公判は同日結審した。判決は10月6日。
電通に罰金50万円求刑 違法残業初公判、社長が出廷  2017/9/22 朝日新聞

 まずは、こういう事件を刑事事件とした事については、遅すぎた感もありますが、素直に評価したい所です。しかし、命が失われているのに、相手が法人なためか刑事事件としては求刑罰金五十万円しかないこと(賠償金は支払われていますが)、業務上過失致死罪の場合は実名+容疑者or被告で報道されるのに、この事件では、当時就任していた社長や上司の名前は出ておらずに報道されない現状(もっとも、業務上過失致死罪で、罪が確定していない段階での実名報道も、過度のプライバシー侵害に当たる気がしますが…)から、まだまだ過労死に対する意識や対策は不十分感じます。
 また、刑事告訴されたのは、あくまで「労働基準法」の違反となっており、業務上過失致死罪の「刑法」とは併合罪として扱われていません
 なお、労働基準法については、どれが適用されるかの記載がないために適用されたものがどれかは判断がつきかねますが、罰金が五十万円以上で該当しそうなものをあげると…。

労働基準法
第五条  使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
第百十七条  第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する

 となりますが、今回の件だと

第三十六条  使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。
第百十九条  次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一  第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第一項ただし書、第三十七条、第三十九条、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者

 が該当するでしょう。また、刑法の業務上過失致死罪については、

刑法第211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

 が挙げられます。業務上過失致死罪と併合すれば、50万円以上問う事は可能でしょう
 まだ判決は出ていませんが、刑事事件としては、50万支払えば終わりというのでは、命が失われている現状、極めて軽すぎる罰のように感じます。また、本来であれば、上司や当時の社長に対しても相応の罰は必要でしょう。
 裁判の結果がどのようになるかを待ちたい所ですが、過労死はあってはならないという認識が当たり前になることを願ってやみません。まだまだこの事件を見るに、不十分に感じるので。

参考:
電通過労自死事件から、私たちが学ぶべきものは何か~政府の「働き方改革」を問う~ 嶋崎量

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